むろと廃校水族館が世に現れたストーリー。若月元樹館長のアイデア。
むろと廃校水族館は、廃校を改修して作られた水族館です。
そのアイデアは、珍しいものとして注目されています。
学校中を泳ぐ魚たちは、なんともノスタルジーで不思議な世界。
人口の少ない場所ですが、この水族館は大人気です。
しかしオープンするまでの道のりは簡単ではなく、協議を重ねた上に出来たものだったそうです。
その中で、キーパーソンとなったのが、若月元樹(わかつきもとき)館長。
この水族館の運営管理を行っている、「NPO法人日本ウミガメ協議会(以下、ウミガメ協議会)」の研究員であります。
水族館のネーミングから運営費の問題、展示する方法など、ユニークな提案で解決されたそう。
今回は
廃校水族館の
立ち上げストーリー。
若月館長のアイデアに
ついてまとめていきます。
ウミガメ協議会と廃校との出会い
2003年 ウミガメ協議会が、若月さんをウミガメ調査員として室戸市へ派遣。
調査研究を通して、地元との信頼関係を深めていく。
2006年 椎名小学校が閉校扱いになる。
2017年 室戸市が、椎名小学校を「むろと海の学校」として、指定管理者募集を開始。
→ウミガメ協議会が名乗りを上げる。
室戸市は、過疎化が進み、全国814市のなかで人口が下から5番目という小さな市です。
市は、観光客の誘致や交流人口の拡大を目指していました。
ウミガメ協議会は、調査研究のサンプル置き場に困っており、廃校を活用できないかと模索していました。
その両者の需要と供給がうまくマッチしたのですね。
水族館づくりの問題点
しかし、水族館を作るには問題点がありました。
費用が五億円ということです。
四国でオープンする他2つの水族館は、総工費数十億だったそうです。
そして人口が1万3千人ほどの室戸市。18年には病院さえも閉院。
そのため、室戸市市議会や市の職員から大反対を受けたそうです。
無駄な投資だと批判が大きかったのです。
住民からも、学び舎をどうされるのか不安の声も多かったそうです。
確かに、不安になるのは当然かもしれません。
水族館のはじまり
若月館長は、当初は廃校を利用して、小さな博物館を作り、わずかな入館料で運営していくつもりだったそうです。
しかし、小松市長の「室戸市の資源を生かし、いっそ水族館をつくってはどうか」の一言から方向性が大きく変わったと言います。
若月さんは、沖縄県の人口200人の黒島のウミガメ研究所で活動していた実績もありました。
そちらも島の一大観光施設となっています。
小松市長がそこを見初め、若月さんも成功を感じたところから、廃校水族館が誕生したということです。
若月館長のアイデア
◇運営費用について
運営費用については、行政からはお金を一切もらわず、ウミガメ協議会がすべて入館料とグッズの売り上げで賄っているそうです。
そのため、観察と視察で工夫をしているそう。
お遍路さん企画をしたり、バスツアー企画をしたり、
様々な話題づくりや戦略で人を集めているのですね。
また、展示している魚たちは、近隣漁港の定置網にかかった魚たち。
ほぼゼロ円で仕入れているそうです。
学校備品は使えるものは使っています。
逆に味が出て素敵ですよね。
◇「むろと廃校水族館」というネーミング
若月館長は、「廃校」「水族館」とつけることにこだわったそう。
当初、廃校という言葉に市の担当者は
難色を示し、代替案も出ていたそうです。
しかし、若月館長は、水族館のイメージを的確に伝えないと人は来ないという確信がありました。
「廃校水族館」と
呼ばないと
プロジェクトを降りる
とも言ったそうです。
廃校問題は全国的なものとなっている今、話題性を考えてあえてつける発想が秀逸ですね。
全国から議員視察も訪れるそう。
実はこの水族館、正式名称を「室戸市海洋生物飼育展示施設むろと海の学校」と言うそうですが、
「むろと廃校水族館」
との呼び名で定着していますよね。
◇オープン日
室戸市は、GW明けの土日を打診していましたが、若月館長は、GW前の木曜日を選びました。
GWのお客さんを見越して、かつ、メディアが来られるように平日を選んだそうです。
考え抜かれていますね!
◇話題性づくり
館内には、若月さん自ら考案のキャッチコピーや魚の紹介文がたくさんちりばめられています。
「いつでも参観日」
「ブリです。定置網からきました。」など、
独特で親しみの持てるキャッチコピー。
跳び箱をくりぬいて中にはめ込まれた水槽。
開館、閉館時間の代わりに、登校、下校時間と掲示。
入場券のデザインはアカウミガメの卵とほぼ同じサイズのシールとして利用できるなど話題性の仕掛けも。
Twitterも面白くて話題になってますよ!
◇頑張りすぎないことを心がける
ウミガメのプールの底に砂を敷き詰め、掃除の手間を省くことでスタッフの疲労やコストを削減。
入館料は、オペレーションの煩雑さを避けるため、現金のみ可。
持続可能な経営ができる工夫をしているそうです。
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まとめ
若月館長の斬新なアイデアで、水族館がここまで人を引き寄せたのですね。
ネーミングに仕掛けがあったとは、思いもよりませんでした。
話題が話題を呼び、人を集め、市が活気づく。
そして住民の方達と協力しながら盛り上がっている水族館、素晴らしいですね!
若月さんには更なる目標もあるそう。
それは、廃校水族館を大学生たちの研究拠点として活用することだそうです。
ウミガメ研究の幅を広げ、室戸市の名を世界に広げてくれるかもしれないという想いがあるそうです。
大きな目標やウミガメへの情熱が強い若月館長。
その気迫からアイデアが出て、魅力的な水族館を作り上げているのでしょう。
参考文献:廃校再生ストーリーズ 株式会社美術出版社
参考サイト:ひとまち結び 日経BP
https://project.nikkeibp.co.jp/hitomachi/atcl/column/00008/112500014/?P=2
FNNプライムオンライン
https://www.fnn.jp/articles/-/22713?display=full
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